恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
「実は俺さ、毬ちゃんとケンカするほど仲よしの桐矢のことがうらやましくてさ……」

「え? アレは仲がいいからじゃなくて、マジでムカついてケンカしてただけだよ」

「俺にはそんなふうには見えなかったけど」

「そーかな……他人には、そーいうふうに見えたのかな?」

「そのうえ、あんなことがあったもんだから……桐矢が毬ちゃんの心を独占してしまったことにも、不謹慎だとは思ったけど……でも心のどこかでアイツに嫉妬していた」

「誠志郎さんが剛に嫉妬…?」

「命を捨てて毬ちゃんを守ったアイツにはかなわない。それでも超難関の司法試験をクリアーできれば、俺も自分に自信が持てるようになると思うし、そのときは自信をもってキミにプロポーズするつもりだった……」

「そうだったんだ……。あたしって超ドン感だね…。剛のときもそうだったけど、全然気づかなかったよ……」

自分で自分がイヤになる。

身近なところに2人も、あたしのことを想ってくれてる男のヒトがいたのに、なにも知らずにいつもいっしょにいたなんて。

「今にして思えば、あの最後のサッカーの試合のとき、桐矢がチームプレーを無視して単身相手チームのゴールを狙ったのも、そして試合終了間際に流星シュートを決めたのも、みんな毬ちゃんの前でカッコイイところを見せたかったからなのかもしれないな」

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