恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
ちょっとキレ気味だった。

「それはできない…」

うつむいたまま、あたしのほうを見ないで静かな口調で言う彼。

「なんで!?」

あたしは両足を地面につけてブランコにブレーキをかけた。

「なんで“好き”って言ってくれないの? 誠志郎さん、あたしが好きなんだよね?」

「その言葉をクチにするのは、キミのフィアンセに悪い」

「彼には黙ってるし、もちろん誰にも言わないよ。だから言って、“好き”って言って」

冷静になって考えると、われながら支離滅裂だと思うけど、このときあたしはなにがなんでも誠志郎さんに「好き」って言わせたい、そんな思いしか頭の中にはなかった。

「ちょっと待ってくれ。これから結婚しようっていうヒトに向かって、そんなこと言うヤツが、どこの世界にいるんだよ」

「いるよ」とあたしは心の中で言った。江波さんは勤さんのことを「好き」って言ったし、もしも彼女のいうとおりなら勤さんも彼女のことを……。


「ひょっとして“マリッジブルー”じゃないのか?」

「え…」

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