恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~

またマリッジブルーか…。ったく、あたしの気持ちも知らないで、どいつもこいつもマリッジブルーのひとことで片付けようとしないでほしいよ。

「俺にだって、結婚を前に不安になる気持ちを想像することくらいできる」

「分かるはずないよ」

「毬ちゃんの夢は絶対叶う。いや、みんなのためにも絶対に叶えてほしいんだ」

「みんなの……ため?」

あたしはまっすぐに彼を見た。

「小さい頃、見ていた夢を本当に叶えてしまう人間なんて滅多にいるもんじゃない。それは大人へと成長していく過程で自分という人間の限界を知ってしまうからだ。だから、ほとんどのヒトが夢を諦め捨てちまう……」

「たしかに……知之くんはいろいろ悪あがきしてたけど、結局は実家の八百屋さんを継いじゃってるし、役者志願だった俊也くんも今は役場で働いてるしね」

「だから、そういう悔しい思いをしたみんなのためにも、毬ちゃんは自分の夢を絶対に叶えてほしい。毬ちゃんならできるさ。だって、毬ちゃんは“夢見る乙女”だから」

「夢見る……乙女……」

「夢見ることを諦めたみんなと違って、毬ちゃんには夢見る力があるだろ?」

彼の微笑みがとても穏やかで暖かった。
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