恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
「そう。男手ひとつであたしを育ててくれた父さんの夢を叶えてあげるんだ。一人娘のあたしが幸せな結婚をして、かわいい孫が見られること。それがきっと父さんの夢だから」

「そーいうことか…」

「そのためなら誰とでも結婚しちゃう」

そう言って、あたしは彼から視線を逸らした。

「だ、“誰とでも”って? じゃあ、フィアンセのことは好きじゃないってコト?」

彼はあからさまに驚いているみたいだった。

「キライじゃない。ルックス、学歴、職業全てが一流だし、それに性格だって誠実だし。だから、ついさっきまで勤さんと結婚してあげようと思ってたところ」

「“ついさっきまで思ってた”って……」


「ずっと前からあたしのこと、誠志郎さんが好きだって思ってくれてたんなら、あたし、誠志郎さんのお嫁さんになってあげるよ」


「ええっ!!!」

あたしの爆弾発言が、彼の心に爆発的ショックを与えたみたいだった。

「あたしが誠志郎さんの夢を叶えてあげる」

言い終わるなり、あたしは彼の胸に飛び込んで力いっぱい抱きついた。

「ま、毬ちゃんっ…」
< 156 / 227 >

この作品をシェア

pagetop