恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
昼間、年に1度の“心臓ドック”に行ったあたしの胸には“ホルター”と呼ばれる携帯式の心電図が装着されていて、張り巡らされた何本もの電線コードが、自分でもまるでサイボーグになったみたいに見えた。
「ごめんね。今夜はあたし、ホルターつけてるから、これ以上ドキドキするようなことはできないんだよね~♪」
重くなってしまった空気を変えたくて、わざと明るい調子で言ったけど…、
「………」
彼はなにも言ってくれない。
「こんなの見せて、思いっきり引いちゃったよね……」
あたしはブラウスの前を閉じて、はずしたばかりのボタンをまた1つずつ閉めはじめた。
「ヤッパ今夜は帰る……タクシーでも拾うから心配しないで」
「キミの母親が心臓が弱くて、若くして亡くなられたのは聞いていたけど……」
彼が言いにくいそうにしてるのが、あたしにはハッキリ分かった。
「やっぱイヤだよね? 去年までの心臓ドックの結果は問題なかったけど、でもイヤだよね? いつ心臓がどうなるか分からないような人間と結婚するのは」
「………」