恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
けど、自分ではフツーにしてるつもりなのに黙ってると「怒ってるの?」って訊かれることがあるあたしに向かって、話しかけてくるような物好きはそうそういない。
“キ~ン、コ~ン、カ~ン、コ~ン…”
その年の12月2×日、2学期の終わりを告げるチャイムの音が校舎に鳴り響いた。
“あしたから冬休み。これでしばらくは学校に行かなくても済む”
そう思うだけでホッとする。
あたしにとってチャイムの音は、学校生活の呪縛からあたしを解放してくれる魔法のメロディといってよかった。
いつも聞き慣れているチャイムの音が、このときだけは、まるでヨーロッパかどこかの丘の上にあるチャペルから聞こえてくる清らかな鐘の音のようにさえ思えてしまう。
“キ~ン、コ~ン、カ~ン、コ~ン…”
地球上のありとあらゆるものには、地面に引っ張られる“万有引力”というものが働いているはずなのに、終業式の日に限ってそのチカラは無力化される。
まるで背中に羽根がはえてるみたいに足取りは軽くなるし、そして心までもがウキウキして、生徒はモチロン、先生たちまでもが、なんとなくチャカついているようにあたしには見えた。