恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
「ありがとう」と言いかけた勤さんの言葉をさえぎって…、

「ちょっと待ってくれ! ちゃんと考えてそんなこと言ってるのか? 二人にただ同情して言ってるだけじゃないのか?」

…と誠志郎さんが強い調子で言った。

「そんなことないよ」

「じゃあ、どういうこと? 二人の恋愛のために一肌脱いであげようと思ってるのかもしれないけど、産みの親と会えなくなる子どもの気持ちまで、ちゃんと考えてるのか?」


彼に言われてハッとした。

杏奈さんはあたしを産んですぐに天国に行った。だから、あたしは母に会った記憶がない。母に会えない淋しさは他の誰より分かってるはずだった。

目の前のことばかりにとらわれて、大切なことを見落としそうになっていた、そんな自分が情けなかった。

誠志郎さんがいなかったら、取り返しのつかないことになってたかもしれないとも思う。

けど、一方でそんな思いを認めたくないあたしもいた。ここで自分の非を認めてしまうということは、自分で自分の夢をダメにしてしまうことにほかならなかったからだ。


「そうね。やっぱり、子どもは本当のお母さんと一緒にいるのが一番幸せなのよね」

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