恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
黙ってゆっくりとうなづくあたし。
たしかに誠志郎さんのことが好きだった。
でも考えてみれば気がついて当然だ。ほとんど毎日、放課後はいっしょだった。そして土曜や日曜、祝日だって……。
みんなが、あたしの気持ちに気づいてもおかしくない。
「あれから3年……毬ちゃんももう十分苦しんだと思うよ」
助手席のおばさんが前を向いたまま言う。
「サッカー部のみんなも、今じゃ大学を卒業して、中には、この町を出て行ったヒトもいる。多分それぞれ社会人として、剛のことなんて思い出すヒマもないくらいに忙しい毎日をおくってると思うよ」
「………」
「けど毬ちゃんはあれからもう3年も経つのに、まだ剛のことを気づかってくれてるじゃないか。幸せ者だよ、あの子は」
前を向いたまま微笑むおばさんの横顔が、後部座席のあたしからも見える。
「ありがとね。もうそれで十分だよ。あの子は3年間、毬ちゃんの心の中に居座らせてもらったんだから、いいかげんにして今度は誠志郎くんに席を譲らせるわ」
「お、“俺に席を譲らせる”って…!?」