恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
「ワシらも剛と同じ気持ちだ。他のヤツなら許さねぇが四方誠志郎なら許すことができる。とにかくお前は告白をしろ。でないとゼッテェ後悔するぜ」
「………」
黙ってうつむく誠志郎さん。
彼だって、マスター夫妻がどんな気持ちで自分にそんなことを言ったのか考えると「分かったよ」なんて簡単に返事なんかできなかったんだろうと思う。
夫妻はすごくやさしいヒトたちだから、きっとあたしらにとって剛が死んだことが精神的な重荷になってるんだろうと思って、肩の荷を降ろさせてあげようとしてるんだと思うけど、でも、そのやさしさが余計に辛かった。
あたしは誠志郎さんのことが好きだった。
そして誠志郎さんも、あたしのことをまだ好きでいてくれてるみたい。
今ここにお互いのことを想い合う二人がいっしょにいるのに、たったひとこと…、
「好き」
…と言えずに黙り込んでいる。
恋するヒトたちが頬を赤らめながら使う“好き”という言葉も、そのときのあたしたちにとっては決してクチにしてはいけない禁句(タブー)でしかなかった―――