恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
「俺……取ってやろっか…?」
「でも…」
「破傷風になると大変だし……俺、サッカーやってて転んで石が入ったとき、自分で取ったことが何回もあるから、そーいう傷とかけっこー大丈夫なんだ」
「そーなんだ……このくらいのことで病院に行くのも大袈裟だし……じゃあ……お願い……しちゃおっかな…」
「分かった…」
「でも、痛くしないでね…」
「大丈夫。俺を信じて」
「うん、信じるよ」
彼は、あたしが常備している携帯用の裁縫セットから“待ち針”を1本取り出すと、その先端をライターの火で真っ赤になるまで焼いて消毒して、ストッキングが破れてむき出しになっているあたしの右膝小僧を真剣な眼差しで睨みつけた。
“ハァ…、ハァ…、ハァ…”
あたしたちは今、お互いの息づかいが聞こえそうなくらいの至近距離まで接近していた。
“ドクン…、ドクン…、ドクン…”
これから針で痛いところをつつかれることも当然ドキドキするけど、今のこのシチュエーションはもっとドキドキしてしまう。