恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
また傷口がチクッとしたんだ。

「まだ何もしてない、って…」

「ホント?」

「あぁ…」

「でも、今、ホント痛かったし…」

痛がりのあたしに彼はちょっと呆れたような顔だった。

「ラジオでもつけよう。毬ちゃんはラジオの音楽でも聞いて気を散らしてくれ。キミがそっちに気を取られれる間に、俺が石を取ってやるから」

「うん、でも音楽なんか聞くより、あたし、ずっとしゃべっててもいいかな? しゃべってたほうが気が紛れると思うし…」

「え? あぁ、別にかまわねぇけど……」

「じゃあ、勝手にあたし、おしゃべりするから、誠志郎さん、痛くしないでね…」

「分かってる」


窓の外には音もなく、しんしんと雪が降り続いていた。


「あのね……」

あたしは切り出した。

ちゃんと本当の気持ちを伝えなきゃ。誠志郎さん、あたしがいーかげんな気持ちでプロポーズしたって思ってるよ、ゼッタイ。
< 206 / 227 >

この作品をシェア

pagetop