恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
「うん、じゃあ」
「あまり遅くならないうちに帰るんだぞ」
「分かってる」
お墓参りの帰り、あたしを駅前の本屋さんの前までクルマで送ってくれた父は、先にひとりで家に帰っていった。
でも30分ほど店内の本やCDをいろいろ物色してみたものの、結局、欲しいものはなくて、何も買わずにトボトボと自宅への道を歩いていたあたしの耳に…、
「ワァァァァー…」
…と、遠くのほうから大歓声が聞こえてきた。
あたしンちの近くには“明東大学”のグラウンドがあって、そこでは土曜も日曜もカンケーなく、いつもどこかの運動部が練習や試合をしていたものだ。
あの歓声の感じからして、きっと今日は試合が行なわれているんだと思う。
歓声に導かれるように歩いていくと、思ったとおりサッカーの試合の真っ最中だった。
スコアボードを見てみると“明東”と“白崎”という文字があり、“0-1”で明東大学が負けていた。
サッカーにはなんの興味もない。