恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~

でも、このまま家に帰ったところで何もすることはなかったし、しばらくバックネット裏から試合を観戦することにした。

要するにヒマつぶしってコト。


ところが、それから数分もしないうちに…、



「ねぇ、向こうでいっしょに応援しよ?」



…ってバックネット越しに、突然、全然知らない女のヒトが、すごく馴れ馴れしい感じで話しかけてきた。

年は20歳前後。手には黄色いメガホンを持ち、その手首にはミサンガがまいてあった。化粧っけのない日に焼けた肌が印象的だ。

「別にいいです…あたし、もう帰りますから」

そう言って、その場から立ち去ろうとするあたしに向かって…、

「え~、それは困るぅ。“三つ編みちゃん”にこのまま帰られちゃあ、ウチのチームが負けちゃうよ~」

…って、甘えるように言う彼女。

“たしかにあたしは三つ編みにしてるけど、なんで見ず知らずの女のヒトに三つ編みちゃん呼ばわりされたり、甘えられたりしなきゃいけないワケ?”


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