恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~

もちろん、ただのあいさつとゆーか、友好のしるしとしての握手なのは分かる。いくらあたしがオトコを知らないからって、たかが握手くらいで“自分のカラダを触られる”なんて大袈裟に身構えて警戒する必要もない。

だけど“握手”という行為は“手をつなぐ”という別の表現をすることもできる。

そして、そのときにあたしは“男のヒトと手をつなぐ”という行為に対して、異常なくらいの恥ずかしさを感じていた。

だから、あたしは右手を下ろしたまま…、

「は、はじめまして…」

…とだけ答えた。


「あ~ァ。お前、ソイツに嫌われちまったな」

またもや金髪のヒトの、ヒトを小馬鹿にしたような言いぐさ。

「あの、あたし別にキライなワケじゃ…」

キライだから握手をしなかったわけじゃない。

ただ男のヒトと手をつなぐという行為が、すごく恥ずかしかっただけ。

「じゃ、スキなのかァ?」

金髪のヒトが茶化すように言う。

「そーいうんじゃなくて……」

あたしは返事に困って、うつむいてしまった。
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