恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
「おい、桐矢。俺らの勝利の女神さまをあんまりからかうもんじゃねぇぞ」
誠志郎ってヒトが助けてくれた。
出会ったばかりのこのヒトが、どーいうヒトかなんて分かるはずもない。
だけど少なくとも金髪のヒトより“オトナ”だってことだけは分かる。
「フンッ。勝利の女神なんかに頼んなくても、オレ様がガンガン今日みたくシュートを決めてやる、っつーの!」
このヒト、相当の自信家みたいだけど、でも今日の試合で2点入れたのはこのヒトだし、クチだけじゃなく実力もあるんだと思う。
「まりっぺ、ごめんね」
郁巳おねーさんが申し訳なさそうに、あたしに向かって手を合わせる。でも、おねーさんが謝ることじゃないと思う。
「彼は“ミッドフィールダー”っていうポジションの選手で、名前は“桐矢 剛”くん。自称“明東大の戦神(いくさがみ)”」
そういえば試合中、ゴールを決めた金髪のヒトに向かって、おねーさん、「ゴーくん」とか言ってたっけ。
「剛くん、スッゴイ目立ちたがり屋さんだから、2度もシュートを決めた自分より、まりっぺのほうが注目されてるのがきっと面白くないのよ」