恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
あたしは平成生まれだから、“昭和”っていう時代は知らないけど、でもそのお店からはなんか昭和っぽいニオイが漂っていた。
「おやじぃ、祝杯の準備はできてるかァ?」
剛っていう金髪のヒトが横柄(おうへい)な感じで、リーゼント頭のおじさんに言う。
きっとこのヒトが彼の父親であり、そしてこの喫茶店のマスターなんだろう。
「“準備はできてるか”だと? 弱少チームのお前らが勝つとは思わねぇし、準備なんかしてるわけねぇだろが、このタコスケが」
“おやじ”と呼ばれたおじさんのリーゼント頭はテカテカと光沢があって、昭和の時代のヤンキー……いや、あの時代は“ツッパリ”って呼んでたらしいけど……とにかく昭和のヤンキーって雰囲気があった。
そーいう意味でいえば、金髪のヒトは平成のヤンキーってことか。まったく親子そろってヤンキーなんてロクな親子じゃないと思う。
「ちぇっ。ゼッタイ勝つから準備しといてくれ、って言ったじゃんかよ」
「へぇ、珍しく勝ったんだねぇ」
そう言ったのは爆発したようなチリチリパーマのアフロヘアー……いや“カーリーヘアー”のおばさんだった。
「おふくろにも見せてやりたかったぜ、オレ様のスペシャルシュート」