恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
電話を切って、パタンとケータイをたたむ彼。

「よかったな、毬ちゃん」

「え…」

「親切なヒトが拾ったサイフをお店のヒトに届けてくれたらしくてさ。それで今、キミのサイフは本屋さんのレジのヒトが預かってくれてるそうだ」

「ウソ…信じられないです……」

「サイフの中の学生証に“間宮 毬”って書いてあるって確認済みさ」

「………」

そう言われてもまだ信じられないような気持ちだった。


「よかったじゃん♪ あとで本屋さんに行って、もらって帰りなよ♪ いや~、ホントによかった♪ 世の中まだまだ捨てたもんじゃないね~♪ 拾ったサイフを届けてくれるようないいヒトが、まだこの国にもいたんだね~♪ いや~、よかった、よかった♪」

郁巳おねーさんは当のあたしより素直に信じて喜んでいる。

「じゃあ、サイフを見つけてやったお礼として、カネを何割か、もらっとこうか」

さっきあれだけ熱っぽくいいハナシをした金髪のヒトが、また元のケチでセコイ男に戻ってた。

「サイフを拾ったのは桐矢じゃないだろ?」

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