恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
「呆れた……父さん、まだ飲むつもり? それにあたしはまだ未成年だよ。お酒はハタチになってから」

「誰も見ちゃおらん、固いことを言うな♪」

それにしても、明らかにこれは飲み過ぎだ。こんなに酔っ払った父は見たことがない。

それにいくらお酒に酔ってるからとはいえ、最近、父のこんなにご機嫌な様子は見た記憶がない。歓迎会の席で、よほどいいことがあったんだろう。

「スーツがシワになるから、早く着替えて寝たほうがいいよ。はい、脱いで」

ハンガーを手に、そう言うあたしに向かって、父は…、

「すまんのぅ、お前には世話ばかりかけて……母さんさえいれば……」

…と申し訳なさそうに言った。

「おとっつあん、それは言わない約束よ」

…って時代劇なら、こんなとき、こーいうセリフを返すんだろうけど、あたしは…

「ハイハイ、分かってんなら、これ以上、世話焼かせないでよね~」

…と軽く返した。でも…、


「安心しろ。お前も、もうすぐ私の世話から解放される」



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