恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
…と父は真顔で脱いだスーツを差し出した。

「え…?」

一瞬、父の言ってる意味が分からなかったけど、スーツを受け取った瞬間分かった。

「安心して、…ってゆーか、親としては娘が嫁に行かないのは心配なのかもしれないけど……でも、まだ当分結婚の予定はないから。フフッ」

あたしは自虐ネタで笑いをとって、父を安心させようとした。でも…、


「そうでもないぞ」


やっぱり父は真顔だった。そして今度も言ってる意味が分からなかった。

「“そうでもない”って…?」

「今夜の歓迎会の席でな、新しく病院に勤務することになった看護師さんと話をしているうちに、お前の話になってな」

「あたしの話?」

知らないところで自分の話をされるのは、あまり気持ちがいいものじゃない。

「あぁ。そしたら、そのヒト、“ちょうど知り合いにお嫁さんを探しているヒトがいる”って言ってな、私が“是非、紹介してほしい”と頼んだら、その場でスグに電話をしてくれて、相手のヒトも “一度会ってみたい”っておっしゃってくれたんだ」


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