恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
「ソレって要するに、その看護師さんの紹介してくれたヒトとお見合いしろってコト?」

「そういうことだ。せっかく“結婚相談所”に入会したのに、なかなかいい相手が見つからんし、これぞ、天の助けじゃないか」

「………」


あまりに急な話で、もちろんとまどいはあった。でも “下手な鉄砲もカズ撃ちゃ当たる”じゃないけど、とにかく勇気を出して一人でも多くの男のヒトに会うことこそが、今のあたしに一番大事なことだと思った。


「あたし、会ってみよっかな、そのヒトと」

「そうか、そうか~♪」

あたしの返事に父は上機嫌になった。

「私も電話でちょっと話しただけだからよくは知らんが、紹介してくれた看護師さんによれば、今どき珍しい聖人君子(せいじんくんし)のようなクソ真面目なヒトらしくてな、まぁ、若いお前からすれば少々退屈に思えるかもしれんが、一生いっしょに生きていく相手なら、やはり誠実な男が一番だぞ」

「ふぅん……」

父は、そーとー乗り気らしいけど、そのときのあたしはまだそのお見合いの話を、どこか他人事のように感じていた気がする。

「どうだ? 早速、会ってみないか? 今度の土曜日……とゆうか、明日だが……明日は、なにか予定は入ってるのか?」
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