恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
たぶんきっと今この瞬間が、あたしの人生の中で幸せの絶頂だと思うから、もうこれから先、ずっといいことないと思う。

それならいっそのこと、今この瞬間に死んじゃいたい。

あたしの心臓、壊れて止まってくれないかな……。


走り出したジェットコースターの上で、あたしは「ギャア! ギャア!」と絶叫してたんだけど、彼のほうは声ひとつ上げず、表情も変えずにまるで劇場で音楽鑑賞でもしているみたいだった。


「楽しくなかったですか? ジェットコースター」

ジェットコースターを降りて、階段を下りながら振り向いたあたしは、あたしの後に続いて階段を下りてくる彼に訊いた。

「いえ、間宮さんになにもなければいいなって、そのことばかりが頭にあって……」

「あたしなら全然ヘーキです♪ たしかにね、あたしの場合、他のヒトたちのと違って、心臓に毛が生えちゃったりしてるんですけどね♪ フフッ……アッ!」

後ろを見ながら階段を下りていたせいで、あたしは階段を踏み外して、体のバランスを失ってしまったんだ。

おしゃれして、履き慣れないヒール高めの靴を履いてきたせいもあるかも。

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