恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~

おもむろにクチを開く彼。


「あっ、この玉子焼きの味、僕、好きです。あんまり甘すぎなくて、美味しいです」


“よかったァ~っ♪♪”

開業医のおぼっちゃまだから、きっといつも美味しいものばっかし食べてるんだろうし、あたしの作ったお弁当なんかクチに合わないのかも……ってすっごく心配してたからホント安心した。

「なんか味付けが絶妙な感じで、いいですね。もう1コ食べてもいいですか?」

「どーぞ、どーぞ♪ 味付けがオトナの男のヒト好みになってのは、多分あたしが家でいつも父のごはんを作っているからだと思います」

「そうですか。もしかして、小さい頃からずっと食事は間宮さんが作っていたんですか?」

「だって、あたししか作るヒトがいませんでしたから」

「エライですね」

「エライってゆーか、あたし的にはもう“朝、起きて、顔を洗って、歯をみがく”みたいな、毎日フツーにしなくちゃいけない日常生活の一部みたいになっちゃってますから。エヘッ」


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