恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
あたしはムカついてソッコー言い返した。

「いーや、ゼッテェ飛んだ。他のヤツには見えなかったかもしれねぇが、卓越した動体視力を持つ、このオレ様の目には、マリヤのクチから発進するツバの軍団がハッキリ見えたぜ」

「いーえ! 飛んでませーん! それにそもそもこのケーキはあたしのなんだから、剛にはひと口だってやんないよぉーだ!」

「お前、そのケーキ、まるっと全部ひとりで喰うつもりかよ? こないだ“ダイエットする”って言ってたばっかじゃん」

「いいのっ! 今日1日だけダイエットはお休みの日っ!」

「ふぅん。それ以上、太ったらボールに間違えられて、オレ様にシュートされるんじゃねぇのか、なんせ名前が“毬(マリ)ヤ・マミ”だからな、ヘヘッ」

憎ったらしい笑い方だった。おまけにアタマ悪過ぎ。

「もォ! 知り合って今日で1年になるんだし、いーかげん名前、覚えなさいよ! あたしの名前は“マミヤ・マリ”! “マリヤ・マミ”なんかじゃなんですぅ!」

剛の言うことはいちいちムカつく。せっかくのシアワセ気分が台無し。


「おい、桐矢、今日の主役をあんまりからかうもんじゃないぞ」


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