恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
「もうこれ以上あたしを苦しめないでよ!」
「お、お前……」
アイツは明らかに動揺していた。
「あたしだってフツーに恋がしたい! あたしだって人並みの幸せが欲しいんだ!」
「………」
下唇をかんでうつむくアイツ。
「だから、そっとしといて……」
少し淋しそうなアイツに同情する気持ちが起きないわけじゃなかった。でもアイツに同情して目の前にある幸せをみすみす手放すわけにはいかない。
「俺はただお前のことをっ…」
「お願いっ」
あたしはアイツが言うのをさえぎって言った。
「お願いだから、あたしのことはもう放っといて……」
「………」
「悪いけどアンタの顔なんてもう見たくない……二度とあたしの前に現れないで……」
「お、オレのことを忘れちまうつもりか!?」
あたしの両肩をつかむアイツ。涙目だった。