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「さようなら」という言葉も、「今までありがとう」という言葉も、何も言わずに、お父さんは、ドアを強く閉めて出ていった。


その瞬間、お母さんは、足が折れてしまったかのように、力なく床に崩れた。


そしてまた、泣き出した。





自分が出ていけと言ったくせに。




大声で喚くお母さんと一緒に、取り残された、私達…。


今、お母さんに何を言ってあげたらいいのか。

今、お母さんに何をしてあげたらいいのか…



手をさしのべてやればいい?

笑顔で抱きしめてやればいい?

それとも一緒に泣いてやればいい?





…きっと何をしても無駄なんだ。





だから私も、お姉ちゃんも、ただ見つめていた。


目の前にいる、お母さんを。





真っ暗な目をした、お母さんを。
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