幻妖奇譚
 時間がわからない。

 一体、どれ程の時間が経ったのだろう?

 ずっと研究室にいるのは苦ではないが、身動きが一切出来ないのは辛いものがある。


 この頃いつも夢を見る。あの踏切の夢を。

 それも決まって夕方、必死に薔薇を探す夢だ――やっと見つけても、手にした薔薇が突然かき消えるのだ。それを何度も繰り返す。

 そういえば、あの男はやはり死んだらしい。研究室の前を通る学生が話していたのを聞いた。

 くっ、くくく……。神様は僕に味方をした!やはり僕こそが彼女を守るべき男なのだ!!

 使命感に燃えていた時だった。

 ……なんだ?急に視界が歪み出したぞ?


 また、後ろから強い力で引っ張られる。

 なんだ?今度は何処だ?

 学校?何処のだ?吸い寄せられる……。ひとつの教室に女子高生だろうか3人いる。

 何を話してるのだろう?まぁ基本、女子高生の会話に興味はないが、神妙な面持ちで話している姿が気になった。

「その男の人、散らばった花をずっと探し続けてるらしいんだけど……」

 花を探し続けてる?まさか、僕の話をしているのか?

 何故、僕の話を見も知らない女子高生がしているんだ?

「つまりは殺されちゃうのよ」


 ――?何を言ってるんだ?この小娘は?



< 28 / 96 >

この作品をシェア

pagetop