幻妖奇譚
「ただいま。……サキ」

 鏡に話しかける。


「沙希、おかえり。今日は学校どうだったの?」

 鏡に映った“あたし”が答える。

「うん……」

 ランドセルを下ろし、中からシワシワのプリントを取り出し、サキに見せる。

「母親参観日? でもどうしてシワがついてるの?」

 あたしは学校であった事を包み隠さず、サキに話した。サキは鏡から出られない……外の世界を知りたい、というサキの願いをあたしがもう何年も叶えている。

「――その3人って、沙希が泣いてた事と関係あるわね?」

「……ッ!!」

 一日だけ、サキに報告できなかった日があった。信じていた……“友達”。 でも――そう思っていたのはあたしだけだった。

 ただショックで、泣いて言葉にならなかったあの日……。

「沙希……。話して。その日、何があったのかを聞かせて……?」

 サキの言葉に、あたしはコクン、と頷いた……。




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