幻妖奇譚
 その夜、あたしは久しぶりに熟睡した。

 今まで不眠症だったのが嘘のように。光江達の事をサキに話せた事で安心したのかもしれない――。


 朝になって、重い足取りで学校へ向かう。

 教室に入ると、いつもとはどこか違っていた。

「関口さん、聞いた?」

 クラスメイトの一人が声を掛けて来た。

「何を?」

「ウチの学校の生徒が殺されたらしいよ」

「えっ!?」

「男の子達がね、慌ててる先生達の後をつけて職員室で盗み聞きしてたから、間違いないんじゃないかって」

「学校の……って何年生?」

「そこまでは聞けなかったんだって。怖いよね~!!」

 そうだね、と相づちを打ち、黒板に目を向けると『一時間目 体育館に集合』と書いてあった。


 周りの子たちは口々に、変質者の仕業だのなんだと夢中になっている。

 ふと、いつもの癖で左斜め前の席に目をやる。

 ……光江、来てない。

 ぐるっ、と教室中を見渡す。空席がみっつ……。光江と由美子、みちるの席だった。





 ――……まさか?


 本当にいなくなったの?まさかね?


 ――でも、その不安は現実のものとなった。

 全校集会で光江、由美子、みちるの3人が何者かによって殺された、と告げられた。

 余りにも不可解な事件に、先生達も打つ手がなく今日の授業は中止となり、全校生徒は保護者や先生に連れられての集団下校になった。




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