幻妖奇譚

∽殺戮の記憶∽

 ……最初はみちるだったんだ。

「沙希……どんな事があっても目を逸らさないでね」

 サキの言葉にコクン、と頷いた。







 ――みちるは机に向かっている。

 コンコン

「はーい」

 慌てた様に何かを隠すみちる。

「みちるちゃん、お勉強進んでる?」

「うん、ちゃんとやってるよ」

「おやつにケーキを焼いたから、家庭教師の先生が来る前にお食べなさい」

「うわぁ♪ 甘い物が欲しいなって思ってたの! ありがとうママ」

 ……いいな。ママがいたらこんな感じだったのかな……。

「ねぇ! ママ、参観日は思いっきり綺麗にして来てね」

「みちるちゃんったら気合いが入ってるのね」

「うん! 自慢したいんだ!!」

「ふふ、じゃあ、みちるちゃんの為に思いっきりオシャレするわね。あ、ケーキ食べ終わったらお皿は廊下に出して置いてね」

「はーい……ふぅ、危なかったぁ」

 みちるのママが部屋を出ると、みちるは机の横から漫画雑誌を取り出した。

「みちる、勉強なんてしてないじゃない」

 あんなに良いママなのに、嘘つくなんて……。

「許せない? 沙希?」

「うん……許せない。許せないよ!!」

「そうね……あたしも同感だわ」



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