幻妖奇譚
 ――……“ちょろい”って、まさか?

「あれ、全部万引きしたものよ」

「ぜ、全部!?」

「悪い事してる、って少しも思ってないわね。それどころか、万引きを楽しんでるわ」

 今日の“収穫品”の白地に赤いハートのラインストーンが入った手鏡に笑顔を映す由美子。

「うん♪ 可愛い♪」

 鏡に映る自分をしばらく眺め、呟く由美子。







「サキ……、由美子の……」
 言いかけたところでサキがあたしの言葉を遮る。

「言わなくていいわよ。沙希が何を言いたいかわかる。あたしも同じ事を感じたから」





< 57 / 96 >

この作品をシェア

pagetop