幻妖奇譚
 ヘアターバンを外し、ドライヤーをかける由美子。

「はぁ~……、天パじゃなかったら完璧なのになぁ」

 ドライヤーをかけ終わり再び手鏡を持つと、ある童話のセリフを口にする由美子。

「鏡よ鏡、この世でいちっばん美しいのはだあれ? はい! それは由美子ちゃんでぇす♪」

 …………ウザイ

 由美子のナルシスト振りを見て、そう思った時――

 ピシッ……


「ピシ? ……って嘘~ッ!? やだ何で鏡にヒビが入るのよ~ッ!?」

 由美子が鏡に文句を言っているが、最初にヒビが入った音を合図に、部屋じゅうの鏡が次々に、ピシピシと音を立てて割れ、部屋じゅうに破片を落としていく。

「ちょ……っとやだあッ!! 何なの!?」








 パリーンッ!!

「きゃああああっ!!!!」

 ひときわ大きな音を立て姿見が割れたかと思うと、一転して静けさに包まれる。

「も……なんなのよ、コレェ!? 痛ッ!! ゆ、指切ったぁ!! ママ! ママッ!! 早くこのガラス掃除しに来てぇッ!!」

 由美子の周りを埋め尽くすように、鏡の破片が散らばっていて身動きが出来ないらしい。

 そんな由美子の背後――キラキラしたモノが怪しげに浮いていくのを、あたしは息を凝らし見つめていた……。





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