幻妖奇譚
 ヒュンッ!!

 ひとつの破片が由美子の髪の毛を掠める。

「……え? なに?」

 はらり、と破片によって切られた髪の毛が由美子の手の甲に落ちた。

「なんで……髪の毛が?」










 ヒュンッ!!

「きゃあっ!」

 由美子の手の甲に一筋の赤い線が出来る。

 由美子がゆっくりと後ろを振り返る。

「――ッ!?」

 由美子の背後、無数の鏡の破片が浮いている。

「コレ……なんの冗談? 破片が浮い……ッ」

 無数の破片は、由美子の周りをすでに囲み、ゆっくりと渦を巻き始めた。

「だ、誰か来て……マ、ママッ!! パパッ!! 誰か助けて……ッ!!」

 ……あたしはサキをちら、と見た。これから起こる事は、簡単に予想が出来る展開。

 サキがあたしの視線に気付き、くすっ、と笑った。

 あたしも同じように、くすくすっ、と笑う。

 さっきあたしがサキに言いかけた言葉……

 “由美子の顔とか体全部、ぐちゃぐちゃにして”






 ――あたしの中で何かが壊れた瞬間だった……。




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