幻妖奇譚
 くすくす……

 由美子ってば、あーんな顔じゃ生きて行けないよねぇ?

「ね、サキ? 由美子は殺さずにこのままが良かったんじゃない?」

「そうね。あたしもそうしたかったんだけど……」

 サキが鏡の向こうの由美子を指差す。

 狂ったように泣きわめく由美子。そのうち、本当に狂ったのか、自らの体を切りつけている!!


「あはははははは!!!!」

 何度も同じ場所を切っては真っ赤な血が噴き出している。

「なんでなんでなんでなんで死ねないのぉ? あははは!! こぉんなに血が血が血が血ぃ……ドバッて出てるのにぃ!?」

 部屋は、まるで深紅のペンキをぶちまけたかのように赤黒く染まり、異様な空間となっている。

 由美子が大きな破片を手に取る。

「これ、これこれなら死ねるよねぇ死ねる死ねるぅ~♪」

 由美子は笑いながら、破片の鋭く尖った方を由美子自身に向け、思いきり胸に突き刺した!!

「きゃーはははははッ……ごぼっ……はは、は……」

 おそらく肺を貫いたのだろうか、口から血を吐き由美子は前のめりに倒れた。

「…………」

「沙希。次に行……」

「……ない」

「……? 沙希?」

「なんで自分で死んじゃうの? 由美子ってば……」







「もっと時間をかけて苦しんでくれなきゃ、つまんないわ……」

「……沙希……最後は光江よ」

「サキッ!! 光江は由美子みたくつまんなくないよね?」

「ええ、そのはずよ。それも3人の中で最も残酷な……ね」



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