幻妖奇譚
 最も残酷――その言葉にあたしは胸を躍らせた。

 もっと苦痛を……

 もっと恐怖を……

 じっくり時間をかけて味あわせたい――!!

「着いたわ」

「え? ここ?」

 そこは見るからに、光江の部屋ではなかった。

 様々な音の洪水、はしゃぐ中高生の声……ゲームセンター?

 光江は中学生らしい男の子達のグループに混じって騒いでいる。

 ふと店内の時計を見ると18時をとうに過ぎている。

「ゲーセン……って“小学生は18時まで”って書いてるよ」

「そうね……それと、光江の持ってるカバンを見て」

 光江の肩から提げられたカバン。そこには有名な学習塾の名前がプリントされていた。

「この時間はまだ塾の拘束時間のはずよ」

「光江……塾をサボって……?」

「全く悪びれた所がないわね……」

「サキ……まさかここで?」

 サキはくすっ、と笑った。

「さすがにここじゃ人目がありすぎるわ。ここでは殺してない」

「じゃあ――?」

「沙希のリクエスト通りになってるといいんだけど……」

 光江を最高の恐怖に陥れる時が来た――。

 くす……くすくすっ…………。




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