幻妖奇譚
 光江はUFOキャッチャーの前にいる。

「ねえ~、あれ取ってよぅ~! あのいっちばん奥のぬいぐるみ!」

 光江はとりまきの男の子に甘えた声を出している。

 男の子はそんな光江にデレデレしながら答える。

「あれ取ったら、光江ちゃん俺の彼女になってくれる?」

「えぇ~? ど~しよっかなぁ~♪ 取ってくれたら考えるかも~」

 調子良い事言ってる……絶対付き合う気なんてないくせに!

 男の子が硬貨を入れ、アームが動き出す。

 男の子は遊び慣れているのか、微妙な調整を加え、ぬいぐるみの胴体にアームを引っ掛けた……が、持ち上がらない。

「あれっ? ……っかしーな……」

 何も運んで来ていないアームが定位置に戻って来た。

「ちょっとぉ~、どうしたの?」

「ご、ごめん! 光江ちゃん、いつもだったらあれで100%GET出来るんだけどッ!?」

 男の子は何度も繰り返すが、結果は同じだった。

「なんで取れないのよ!? あんたなんかといる時間、全部無駄になったじゃない!!」

 ……本当に光江ってば、性格悪いんだ。男の子は取れなかったショックで、かなり落ち込んでいるのに、あんな風に言わなくても……。

「光江ー、そんな奴ほっといて、俺らとホッケーやろうぜ~」

 別の男の子が光江を誘う声に、甘えた声で答える光江。

 ……早く恐怖に怯える光江が見たい……。



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