【企】ブラインド ユー


驚いて目線を向けると
そこには
将ちゃんが。




「………」


心臓の速さが
落ち着かない。




すると将ちゃんは
薄暗い中
微笑んであたしを見た。









「届いた?」







静まる会場内に
響く将ちゃんの声。




"君に届いて"




溢れ出して
止まらない涙

大好きだと
叫んでいる胸




「うん…っ」



涙でよく見えない
けれど必死に
頷いてみせた





「良かった……」


将ちゃんは軽く溜め息をつき、ギターを背中に回した。




「…てか……将ちゃん、今ライブ中…」




視線が集中する中、
あたしは小声で言う。



ライブ中なのに
周りは妙に静かだし
メンバーも彩香も
何も言わない。




「沙良」




将ちゃんが
そっとあたしの名前を呟くと、

何だか、それだけで
幸せになる。





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