クリスマス恨み節
よし、奥の手!
俺はプレゼント袋から、休憩中に膨らませておいた風船を取り出した。
「俺から、長谷川さんにプレゼントです」
「……」
「黒糖ハチミツミルクキャンディー、でしたよね。探してきました」
よく見つけたな、とだけ言って、長谷川さんは事務所に戻ってしまった。
「北野森! 追いかけな!」
「諦めちゃダメですよ!」
「……アヤノさん、リリーちゃん」
見てたんかい。
「肝心なトコ、ごまかすな」
「泣かぬなら泣かせてみせようホトトギス。押してダメなら二回押せっス」
リリーちゃん、もっと日本語勉強しようね。
「……ありがとうございます! ここ片付けお願いします!」
俺は、食料品売り場で250円のケーキを2個買い、3階の従業員の事務所へ向かった。
「長谷川さんいますか?」
うちの店長はケーキを食べていた。
「屋上にタバコ行ったんじゃないかな」
事務所を出て、階段を駆け上がる。
屋上のドアは鍵が開いていた。
「長谷川さん!」
フェンスにもたれて、タバコをふかしているサンタクロース。
俺は。
ここのスーパーで働いてて、本当に良かったと思えた。
「晴れたな。星が見える」
朝から降っていた雨は、いつの間にか上がっていた。