クリスマス恨み節


「……美由さん。好きです」
「……そっか。だいぶ年上だよ?」
「関係ないです。それにイベントの時は俺も仕事です」


彼女は仕方なさそうにタバコを消した。
告白されるなんて、慣れているんだろう。


泣かぬなら泣かせてみせようホトトギス。


クリスマス。
バレンタイン。ホワイトデー。


彼女を振ったオトコの気持ちも、いまなら解る。
独占したいのに独占できないもどかしさ。


「お客さんに向ける笑顔を俺だけに向けて欲しいんです」
「……営業用だ」
「営業用じゃない笑顔を、見たいんです。俺といて、笑ってほしいんです」


250円のケーキを差し出した。


「ほんとはホールのを買うつもりだったんですけど。例えば、今年のクリスマスなんですけど、一緒に食べませんか?」
「例えばって単語、好きだな北野森は」
「例えば、俺なら、寂しい思いはさせません。どうせクリスマスは仕事です」
「……ぷっ」


笑った。
やっと笑った。


「じゃあ、先に駐車場で待ってろ。着替えてくるから」
「……はい!」


俺は、本物のサンタクロースを、
ずっと探していたのかもしれない


本物って?
プレゼントをくれるのがサンタクロースだろ?


ベアトップのサンタクロースは、俺に頑張る勇気ってやつをプレゼントしてくれた。
生まれて初めてもらったプレゼント。


ドアを開けようとした、美由さんが振り向いた。


「待っててくれる人がいるのは……イイモンだな」


― 完 ―



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