クリスマス恨み節
オープン5分前。
「はいやるよー」
なにを?
「おはようございます!」
「おはようございます!」
「いらっしゃいませ!」
「いらっしゃいませ!」
「ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
「即日完売!」
「即日完売!」
「ガンガン行こうぜ!」
「ガンガン行こうぜ!」
「よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします!」
「……なんか途中、違うの入ってましたけど!?」
「北野森、細かいことを言うな。10年連続即日完売が彼女のモットーだ」
え、長谷川さん何歳なの?
見た目若いけど。
「17からバイトして、そのまま正社員になったって言ってたから」
と店長が言う。
「伝説のケーキ売りと呼ばれてるらしいからな」
27か!
だいぶ年上だな。
その日の勤務で、俺は、彼女の実力を、まざまざと見せ付けられることとなった。
長谷川さんの魅惑のボディに目を奪われ、ケーキを買っていくお父さん方が多い。
いや、多いなんてものではない。
ベアトップのサンタのコスチュームから、こぼれんばかりのバストの肌の白さ。
メイクが濃いわけでもないのに、ハッキリくっきりした瞳と視線がぶつかると、誰もが吸い込まれるように、ケーキを買って行く。
夕方からの追い込みで、100個は売った。
(さすが伝説のケーキ売り……!!)
その日、用意してあったケーキ300個は、23日に係わらず、即日完売した。