クリスマス恨み節


翌日。
24日、クリスマスイヴ。


午後3時を過ぎた時点で、200個いってない。


「やっぱり最近の人は、ホテルのやつとか『全国有名ショップおとり寄せ』とかで買うのかなあ……」


今日は、レジ担当のアヤノさんが呟く。


「ネットだとポイント使えますからね。宅配で持ってきてくれるし」
ケーキって、自転車だと運びにくいし、とリリーちゃん。


天然か。
天然なのかリリー。


「あたし、どこいくのも自転車なんです」
「リリー、仕事場なんだから『私』でしょ」


長谷川さんは、言葉遣いには厳しい。
リリーちゃんは、少しポワンとしている。


「あと100か……。どうしようかな」
「なにか作戦が?」
「北野森。やる前から諦めるな」


長谷川さんは、笑いながら俺の頭を叩いた。


21時の閉店まであと6時間。
1時間に16個売ればいい計算だ。


長谷川さんは、レジ下に置いてある紙袋から、風船を取り出した。
「リリー、やっといて、25個」
「はーい」


リリーちゃんは、シュコシュコと空気入れで風船を膨らませはじめた。
俺の分の空気入れ……、は、ないか……。
風船を25個、膨らませた俺は、腹筋が死にそうになっていた。
いつの間にか、リリーちゃんは、日曜日に放送している変身アニメのヒロインの服を着ている。


……コスプレ!?

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