+−CLASS ROOM×÷
帰り道。

識と別れた後は、千花と2人だけになる。


『何でも聞けなくなったのはいつからだ?』

識の言葉が心の奥で響いていた。



しつこいって思われるかもしれない。

お節介って思われるかもしれない。


その時はその時だ。


千花のことだから気になるんだ。



「潤と何かあった?」

「え?」

「今日変だったから」

「そう? 別に普通だよ?」

「嘘」

「嘘じゃない」

「嘘だ」

「だから嘘じゃないって。恭こそどしたのって感じだし」


そう笑う千花。


いつもの俺だったらそこで一緒に笑って話を流していたかもしれない。



「何年幼なじみしてきたと思ってる?」


真剣に話す俺の態度に、千花はいつもと違う空気を感じたに違いない。


千花から笑顔が消えた。


……かと思うと、千花はまたフッと笑みをこぼした。



「やっぱり適わないな」


千花は苦笑した。


「昨日、告白されたの……。断ったんだけど」

「……そっか」


ホッとした。


だけど、『告白』の2文字に

少し動揺した。


「別に隠してたんじゃないよ? 何か言いにくくて。あんまり人に言うことじゃないと思ったし……」


「うん」


本当は自然に振る舞いたいのに……


何だこれ。

言葉が出ない。


俺は俺が思っている以上にいっぱいいっぱいらしい。


千花は断ったと言っているのに。



「何か気まずくて」


そう言った千花は複雑そうな顔をしていた。



他の男のことで悩む千花に何て言葉をかけたらいいんだろうか。



「それは千花の問題……だな」


俺が発したのはそんな一言だった。


「だよね」



俺に本当のことを話した千花が、密かに俺からの助言を期待していたかもしれないことに、

俺は気付かない振りをしたんだ。



俺たち幼なじみの輪は、少しずつ形を変えていた。


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