+−CLASS ROOM×÷
その日の放課後。


清掃を終え教室に向かうと、教室の前にはこっちに背を向けた前田君が立っていた。


声を掛けようと口を開いたけど、すぐに閉じた。


――長身の前田君の向こう側には宮田先輩がいた。



複雑な気持ちで前田君の後ろを通りすぎると、


「藍!」


突然背後から名前を呼ばれ、勢いよく振り向いた。


振り向いたはいいけど、何が何だか分からない。


だって、その声が私の名前を呼ぶのは初めてだったから。



「こっち来い」


な、何事!?


訳が分からぬまま、とりあえず前田君の指示に従う。



「コイツ、梅沢藍」

「前田君の隣の席の子……よね?」


何故か私の紹介をする前田君と、そんな私をじっと見つめる宮田先輩。

心なしか冷たい目。


「何? 前田君の彼女?」

「は!?」


彼女!?

いやいやいやいや……、彼女じゃないですけど!


私が否定の言葉を発する前に、前田君が口を開いた。



「さっき言った、帰る約束してるってのコイツです」

「へっ?」


隣に立つ前田君の顏を見上げた。


帰る約束?

してないしてない!!



「な? 藍?」


てかまた呼んだし!!


「な?」


答えない私に、前田君の口調が少しだけ強くなった。

……よく分からないけど、肯定した方がいいみたい。


「あ、うん! 約束した! しました!」


そう言って先輩の方に顏を向けると、先輩は溜め息を吐いた。



「なんだー前田君彼女いたんだぁ。つまんなーい」


先輩はそういつもより低いトーンで言うと、何事もなかったかように去っていった。

そのあっさりしすぎた態度に私は唖然とした。




「誰も彼女なんて言ってねーけどな」


そう呟き、前田君は教室に入っていく。


確かに!

……って!!


「何か私に言うことないのかー!!」

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