+−CLASS ROOM×÷
しばしの沈黙の後、前田君はそっぽを向いて言った。



「……悪かった」


『悪かった』

前にも同じ台詞で謝られたっけ。


ちゃんと謝れる。

前田君のいいところ。



「許さない」

「あ?」

「これからも『藍』って呼んでくれたら許しますよ?」


前も私、調子乗ったっけ。


「……勝手に言ってろ」


で、君に睨まれた。




「ねぇ、何で宮田先輩のこと突き放したりしなかったの?」


私の唐突な質問に、前田君は意外にもちゃんと答えてくれた。


「……あの人は、中学ん時よくしてくれた先輩の彼女だ」

「え?」

「あの人はそんなこと知らなかったみたいだけどな」


中学の時お世話になった先輩の彼女か……

それじゃあ下手に手出せないね。



「浮気癖があるらしいが、彼女持ちには手を出さない(智広調べ)」

「……だから私を利用したと?」


前田君はばつが悪そうな顏をした。


「ふーん」


私は冷静を装ったけど、内心嬉しかったんだ。


私を彼女役に選んでくれたこと。

前田君にとって、ちょっとは特別な子になれてる気がして。


利用されたってのはちょっと頂けない気もするけどね……。





帰り際、前田君は呟いた。


「合わせてくれて助かった……



……藍」


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