+−CLASS ROOM×÷
「パス」

「は? 何がパス?」

「あ。こっちの話」



小柴は言ったら悪いと思うけど、地味タイプ。

クラス全体とかになると絶対に意見は言わない。

クラスで目立つような男子に話し掛けたりもしない。


なのに……


自分と同じような目立たない男子の輪にいる時は仕切り役になろうとしてるみたいだし、

女子には結構誰にでも話し掛ける。


そういうところがたまに私をイライラさせる。



「?……あ! 高坂さんガム食べる?」

「食べる」


即答する私。

その私の言葉を受け、小柴は鞄からガムを取り出した。


小柴はよく周りの人にお菓子を配る。

隣の席の私はその度にもらう。


「これ昨日買ったんだけどめっちゃ美味いんだよ!」

「へぇー」


包を空けてガムを口に入れる。


「あ、美味しい!」

「でしょ!?」


普段、小柴の話は半分くらい聞き流している。

けれど、お菓子の時は別。


「私も買おうかな! ありがとねぇ」

「どーいたしまして」


満足そうな小柴。



小柴はある意味すごい奴だと思う。


私が素っ気ない態度で接しても、次の日にはまた同じように話し掛けてくる。

お菓子の時だけ食い付く私を特に何とも思っていないらしい。


心が広いのか

単に鈍感なだけなのか……


それは謎である。

まぁ、どうでもいいけど。




前を向くと、確か隣のクラスだった女の子が佐伯君から教科書を借りて足早に出ていったのが見えた。


彼女かな?


またため息を吐く。

今度は小柴に気付かれなかったようだ。




恋がしたい。


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