+−CLASS ROOM×÷
机の左下をじぃっと見つめている隣の席の男に私は言った。


「あんたキモい」

「は!?」

「どんだけ見つめてんのよ」


すると航平はその文字に少しだけ顔を近づけ言った。


「……この字さ、お前の字に似てない?」

「!!」


何て表したらいいか分かんないけど、

とにかくドキッとした。


「似てる字書く奴とかいるんだな」


私が言葉を発さずにいると、航平が口を開いた。


「……あ。『実は私でしたー』なんて冗談には騙されないからな?」



その瞬間


私の中で何かが弾けた。



私は、航平の方に体を向けて座り直した。



「……私が書いた。それ、私が書きました」


「だからお前な……」


呆れたように言いながら顔をこっちに向けた航平の表情が固まった。


「……え?」


予想外の展開だったに違いない。

どうしたらよいのか分からないらしく、目を泳がす航平に、私は吹き出した。


「ははッ、騙されてんじゃん! 自分で言ったくせに馬鹿じゃない!?」

「はぁ!? 嘘かよ!? お前が急に真剣な顔すっからだろ!? まじありえねぇー!」


真っ赤になった航平は、勢い良く机に伏せた。



「そーだよ。ありえないんだよ。馬鹿」


私はそう呟き、廊下に出た。



やっぱり言えなかった。

恐くなった。

私は臆病者だ。


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