恋人は隠れ既婚者【前編】


帰りはタクシーで、彼が自宅近くまで送ってくれた。


逆方向なのにね。


タクシーから降りたくない…

もっと一緒にいたい…


そういうわけにはいかないことを充分わかってる。


彼に恋する自分を抑えることで、私は私を保っていられる。


私は“母親"なのだから…


私を必要としている子供達が待っている。


恋に溺れている時間はない。


だから恋に恋しているだけで、充分なはずだった。


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