恋人は隠れ既婚者【前編】
『少しはお役に立てたかな?』
帰り道の運転席で微笑みむ彼。
彼の車で自宅近くまで、送ってもらった。
「そんなぁ!お役に…なんて。
ほんとにありがと!!
また来年ね。良いお年を…」
『おぉ!こちらこそ!良いお年を…ゆりさんも風邪ひくなよ!
あっ、馬鹿は風邪ひかないって言うから関係ないか!』
「ねぇ一言、余計じゃないの?」
『アハハッ!』
「もう!」
彼は私を源氏名で呼ぶ。
笑い声を響かせて、車のドアを閉めた。
貴重な一日が終わりを告げて、それと同時に、さが兄への想いが増していくのを感じずにいられなかった。