恋人は隠れ既婚者【前編】


「…入るけど…後でね」


視線のやり場がない私は、逃げるように脱衣所から出た。


ドア越しにガタッと音が聞こえて、きっと彼がお風呂に入ったんだとわかった。


どうしよう…


ここにいても仕方がないので、とりあえず脱衣所に戻った。


脱衣所の鏡の中にいるもう一人の自分に問い掛ける。


一緒に入る?


いや、無理だよ。

恥ずかしいし…


ふう〜と深く息を吐き出す。


しばらくして…戸が開いた。


ドキッ!


白く熱い湯気が漂う。


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