恋人は隠れ既婚者【前編】
『入らないの?』
湯気から現れたさが兄は私を見ている。
どうしよう…
「…うん。…あとで入る」
はあ…
結局意気地が無いから、一緒に入ると言えなくて、彼が出た後に露天風呂へ入った。
体を洗い湯舟に浸かると、見上げた夜空に浮かぶ星を眺めて溜め息が出た。
露天風呂は凄く気持ち良かったけど、彼と一緒ならもっと楽しかったかもしれない。
恥ずかしさを追い払えない自分が、違った意味で恥ずかしくなった。
残念なのか何なのかわからない、この時間がとっても長く感じられた。