恋人は隠れ既婚者【前編】


彼の腕が伸びてくる。


私の身体は吸い寄せられるように、彼の腕の中にいた。


温かいぬくもりが、熱いほどに肌を伝ってきた。



彼の息がかかる。

彼の匂いがする。

互いの胸の鼓動が聞こえる。

全てが私の脳を刺激した。



突然の出来事で頭の中が真っ白になった私に、ゆっくりと彼が話しかけてきた。


『俺、我慢しようと思ったんだけどなぁ。…やっぱ無理だわ。

こういうの嫌?』


「………嫌じゃない…よ?」


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